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zoom RSS To be, or not to be

<<   作成日時 : 2013/11/10 18:52   >>

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 To be, or not to be: that is the question:
 ウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare 1564年-1616年)の戯曲『ハムレット』(Hamlet)の名台詞です。
 デンマークの王子ハムレット、そして、その恋人オフィーリア(Ophelia)の悲劇は、多くの画家の心を動かし絵画のモチーフとなりました。
 最も有名なものが、ジョン・エヴァレット・ミレイのオフィーリアでしょう。 テート・ブリテン(Tate Britain)収蔵の作品です。

ジョン・エヴァレット・ミレイ(John Everett Millais) オフィーリア 1852年
画像作品拡大画像 クリックしてください

『ハムレット』(Hamlet)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%A0%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88
オフィーリア(Ophelia)
http://marieantoinette.himegimi.jp/ophelia_index.htm
http://www.salvastyle.com/menu_pre_raphael/millais_ophelia.html

 ミレイは、オフィーリアの年齢を12〜16歳程度と想定して描いています。
 ちなみに、ハムレットの年齢は30歳です。(Q2版第五幕、墓堀の会話による
 この絵のモデルは、後に画家ロセッティの妻となったエリザベス・シダルで、文句も言わず40日間バスタブの中でポーズをとり続けたといいます。

ジョン・エヴァレット・ミレイ(John Everett Millais 1829年−1896年)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%83%AC%E3%83%BC
ちなみに、落穂拾いなどで有名な、ジャン=フランソワ・ミレーとは別人です。
ジャン=フランソワ・ミレー(Jean-François Millet 1814年-1875年)の作品はこちら
http://www5e.biglobe.ne.jp/~p_prince/data/millet-bouillie.html

 さて、表題のTo be, or not to be: that is the question:は、劇中で最も有名な台詞ですが、
高校生のときに、「生きるべきか死ぬべきか」という訳を知って以来、何となくしっくり来ない思いでいました。
 今回、テレビで1990年のメル・ギブソン主演の映画を見たのをきっかけに、いろいろ調べてみました。

画像HAMLET
To be, or not to be: that is the question:
Whether 'tis nobler in the mind to suffer
The slings and arrows of outrageous fortune
Or to take arms against a sea of troubles
And by opposing end them? To die: to sleep;
No more; and by a sleep to say we end
The heart-ache and the thousand natural shocks
That flesh is heir to, 'tis a consummation
Devoutly to be wish'd. To die, to sleep;
To sleep: perchance to dream: ay, there's the rub;
For in that sleep of death what dreams may come
When we have shuffled off this mortal coil
Must give us pause: there's the respect
That makes calamity of so long life;



William Shakespeare – Hamlet Act 3 Scene 1
http://poetry.rapgenius.com/William-shakespeare-hamlet-act-3-scene-1-lyrics#note-252017
1996年に制作された、ケネス・ブラナー主演の独白の冒頭部分は、1990年のメル・ギブソン主演の独白冒頭よりもゆっくりと語られています。1948年・1990年・1996年の映画のシーンが見られます。

ハムレット翻訳作品年表
http://homepage3.nifty.com/nada/Hamlet.html

 物語を素直にたどれば、To be, or not to be は、「(復讐を)すべきかすべきでないか」という意味にもとれるのですが、「be」であるか、「be」でないかというところをどう訳すべきでしょうか。
主語を自身にするのか、行為にするのか、もっと広く世の中としてとらえるのかなどと議論はつきません。
 「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ。」これでは、あまりにも大上段に構えすぎの感があると同時に、自分自身の生死という身の振り方にのみとらわれて、本来の目的である、復讐に対しての意味づけが希薄に思えます。
 「なすべきか、なさざるべきか、それが問題だ。」こちらの方がしっくり来るのではと考えていたのですが、
単に主人公の行為にとどめずに、解釈を多義にとらえる言葉がよいのではと思えてきました。
 「このままでいいのか、いけないのか……」
 「いったいどうしたらよいのか、……」といった訳を見つける中で、
 「あるべきか、あらざるべきか、それが問題だ。」これなら、自分の存在の有無という解釈とともに、行為・考え方への容認、つまりそうした行動や考えで良いのかとどうかという意味にもとれると思うのです。
 それを、もっと現代的に洗練させるならば、
 「ありか、なしか、それが問題だ。」となるでしょう。非常に簡潔な文ですが、意味は多義です。
自分の存在があり(生)なのか、それとも、なし(死)なのか、はたまたこうした行為が許されるのか許されないのか、さらに、考え方が正しいのか正しくないのかといったように、解釈を膨らませることができるのではないかと思ったわけです。

 ところで、上の作品年表でも分かるように、日本で最初の訳は、明治7年(1874年)『ザ・ジャパン・パンチ』1月号に掲載されたものであるといわれています。 http://www.yushodo.co.jp/pinus/49/h.html
画像 絵の上には新しい日本の芝居ハムレツさん、“ダヌマルクの守”からの抜粋、16世紀イギリス文学の盗作の証し(Extract from the new Japanese Drama Hamuretu san, "Danumarku no Kami," proving the plagiarisms of English literature of the 16th century" )という英語のキャプションがついており、その下にはハムレットの独白 "To be, or not to be - that is the question." のローマ字訳が途中まで載っていました。「アリマス、アリマセン、アレ ワ ナンデスカ: モシ、モット ダイジョウブ アタマ ナカ、イタイ アリマス」、そして最後の締めは「アナタ サヨナラ、 ソシテ テ ポンポン」といったなんとも珍妙な翻訳でした。
 この記事は、幕末期に記者として来日したチャールズ・ワーグマン(Charles Wirgman、1832年-1891年)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%B0%E3%83%9E%E3%83%B3
によるものです。ワーグマンは、当時の日本のさまざまな様子・事件・風俗を描き残すとともに、「ポンチ絵」のもととなった日本最初の漫画雑誌『ジャパン・パンチ』を創刊しました。また、五姓田義松・高橋由一をはじめとする様々な日本人画家に洋画の技法を教えた人でもあります。
 上演説をとる河竹登志夫氏は、原文を細かく検証したあとで、このパンチ絵とローマ字訳は「当時日本人が翻案劇として実際に横浜で上演したのを、スケッチとともに報道したものだろうと考え、しかもその訳文はふざけたものではなく、当時の横浜方言による逐語訳である」と述べています。
 一方、田中雅男氏は、これは報道画ではなく、ワーグマンの手になる創作の可能性が強いことを示唆しました。 http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/81001631.pdf
画像

 検証結果によると、このローマ字は当時のピジン日本語(横浜ことば 横浜方言などと呼ばれた、外国人居留地に生まれた言語。中国人の使う日本語で「私、中国人、アルヨ」といった類いの混成語。)に近いことが分かります。外国人用の『横浜方言演習(Exercises in the Yokohama Dialect)』なる書物も出版されていました。
http://www.library.pref.osaka.jp/lib/pho6.htm
 しかし、ここにはワーグマンの風刺とユーモアが多分に垣間見られるのです。『横浜方言演習』も、実はパロディ本的要素が多分にあったと思われます。それに当時のワーグマンは、日本語に堪能であったようで、あのような珍妙な日本語を苦々しく思っていたようです。この記事には、『週刊ジャパン・メール』の主筆であった、ハウエル(W.G.Howell)氏のピジン日本語擁護論に対する、痛烈な批判と風刺が込められていたわけです。舞台の手前に座る、後ろ向きの髪の毛の逆立った観客は、ハウエル氏です。
 ちなみに、『横浜方言演習』の記述によれば、difficult : moods cashey(ムヅカシイ)、hot water : oh you(オユ)、I feel ill : am buy worry(アンバイワルイ)等々……とここまではよいのですが、「弁護士」は"consul-bobbery-shto"(領事騒がせな人)、「歯医者」は"ha-daikusan"(歯大工さん)だそうです。可笑しいですね。

 記事の最後の、"Vos valete,et plaudite"はラテン語で、"Anata sayonara,soshte te ponpon"となっています。
お分かりでしょうか。

正しい日本語では、「さようなら、拍手を」という演劇の最後の決まり文句でした。「アナタ サヨナラ、 ソシテ テ ポンポン」から想像できるくらいじゃないと、翻訳や他の言語の解釈はできません。
ハムレットの翻訳・理解どころではないのです……。

ただし、記事のピジン日本語(擬き)から完璧に訳せたら、あなたは天才です。
ハムレットは暗記してるっていうのは、なしですよ……。


一八六〇年代・横浜雑居ことばについて
http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/33756/1/48%283%29_PR93-139.pdf

追記(2013.11.12)
1879年版の『横浜方言演習(Exercises in the Yokohama Dialect)』がWebで読めます。
全31ページ(実質17ページほど)が全文読めるので、興味のある方はどうぞ。
https://archive.org/stream/revisedenlargede00atki#page/n1/mode/2up
こちら(25ページ)では、
https://archive.org/stream/revisedenlargede00atki#page/24/mode/2up
Dentist は Hahdykesan
Lawyer は Consul bobbery sto になっていますね。sto shto は、人の意味です。
Auctioneer(オークショニア・競売人) は Selly shto でした。 

「マー、モッテコイ。マー、シックシック。」−『横浜方言演習』の版をめぐって−
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/81001632.pdf


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